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中古車整備です。今年も新型車両の入れ替え時期になりましたので、お世話になった13モデルをメンテナンスしました。
毎年の事ですが、最後の整備という事と新しいオーナーさんに対してですので、普段のメンテナンスより当然気持ちも入りますし、内容も充実します。基本的には過去のネタでも何度も紹介していますので、同じ内容になります。ダブる箇所も有ると思いますが、今回も気になった事を書きたいと思います。
フロント廻りから見ていきます。ステムベアリングのグリスアップです。例年通りよく乗りましたので交換が必要かなあって考えていたのですが、グリスアップですみました。多分使用期間が短かったからだと思います。去年の十月末くらいから使い始めたのですが、春先あたりに行ったエンジンメンテナンスの期間がやたらに長くなってしまって……ですので、おおよそ八ヶ月ってところですね。
乗ってる間は、ほぼですけど毎週一回のペースになります。
アウターレースにわずかに錆が付いていたのですが、しっかりグリスアップしたあとステムにトルクをかけてもスムーズに動きましたので、そのまま組み上げました。
クラッチフルードは一回も交換しませんでした。エア噛みしてクラッチの切れが悪くなるなどのトラブルも無かったので、そのまま使っていました。
本当は、ブレンボのシステムだとブレーキフルードを使っていますので、マスターシリンダーのインナーキットやシリンダーのOリングなどゴム類に対しての攻撃性が強く、特に注意するべき箇所になると思います。マスターシリンダーキャップのダイヤフラムですが、やっぱぶよぶよになってます。交換が必要ですね。
オイル交換はエンジン側のシリンダーにエア抜きのキャップが付いているんですが、ここにホースを付けて下側からオイルを逆流させるようにして交換します。
一年分のオイルの汚れは、こんな感じですね。
キャブレターの掃除になります。チョークバルブが壊れていて不便だなあとここのところ気になっていたのですが、交換しました。バルブを引いた時カチッと止まるのですが、ストッパーのクリップが効かなくなってノブを引いてもすぐ戻ってしまう状態でした。
一年で交換はちょっと早い気がしますねぇ……。
そんな事より、チョークバルブを取り付ける受け側(キャブレター)になるのですが、結構砂やゴミが溜まります。こんなのが蓄積すると当然バルブの機密性にも影響が出てきます。キャブレーションも濃い目に出ちゃったりして、エンジン不調の原因になってくると思います。
サンドコースを好んで走る人(僕も大好物です)や、やっぱり天候に関係なく走る人(笑)はたまにバルブを外して掃除してみてください。
ちなみに現在のキャブレーションはこんな感じって書いて見ました。
スイングアームピボットベアリングのグリスアップ。
ここはこの前のエンジンオーバーホールの時、エンジン脱着時に作業しましたのでグリスっ気も結構残ってました。でも中古車整備ですので手を抜かぬよう念のため行いました。
チェーン引きのボルト。これはグリスを塗っておかないとまずいです。スイングアームに固着して回らなくなってしまいます。
頻繁に洗車するせいなのかもしれませんが、半年もするとグリス切れしてきますね。
チェーンとスプロケット。見れば解りますけど(笑)。
よく持ちこたえてくれました……というかケチりすぎなんですが、レースに出ていたらこんなになる前に交換しないとならないパーツですよね。
新しいチェーンやスプロケットって機能的にもですけど、外観的にも気分が全然違います。当然チェーンスライダー類も交換しました。
今時のKTMやフサベルって、おおよそ一年で消耗パーツを交換すると次の一年も全然平気で使えます。昔から基本的にはとても耐久性があるマシンですので、要所要所をタイミング良く整備していくのってマシンを長く楽しむためには大事になってくるポイントかと思います。
更に進んでリアホイールベアリングの交換をしました。フロントはまだまだ使えましたので、今回はリアのみの交換となりました。
ホイールベアリングセット(ベアリング、シール、ブッシュとディスタンスカラーやクリップまでセットになっています)っていうのがあって、パーツを単体で買うよりも全然安い商品がメーカーから出ていますが、僕はパーツ単体で揃えています。ベアリングは国内品で安く購入できますし、確かセット物のベアリングは接触シールじゃなかったと思います。今は変わったのかな?
ブッシュは何年か前からメッキがかけられていて、シールとブッシュの気密が良くなり、ベアリングも随分長持ちするようになりました。前だと半年は絶対持ちませんでしたが、今はこんな感じで今回が初めての交換になります。ハイムジョイントも同様で、メンテナンスにかける時間が短くなるっていうのはとっても幸せでーす。
おかしいなー(笑)、デバイスのボルトが緩んで落ちてましたよ……僕以外は触っていないエンジンですので間違いなく僕が締め付けたのですが(汗)、まずいっすよねー。見といて良かったです。
デバイス廻りのボルトはすごく緩みやすくて、全部にロックタイトが付いてい
ます。特に緩むのは奥のほうに見えるトルクスの5mmのボルトです。ほんと、極力強く締めてくださいねー。250のエンジンは振動もありますし、両サイドともたまにカバーを開けて点検するのがお勧めですね。
カーボンの付着一切無しです。すごーく気分が良かったです(笑)。エンジンOH後、走行時間にしたらモトクロスコースを中心におおよそ12時間ってところです。
オイルはELFのHTX976ってちょっと高価なオイルなんですが、定番ですよね? 信頼出来るオイルだと思います。ちなみに混合比は40:1で使ってます。
WPC処理をしてからエンジン調子いいなーって印象だったのですが、ピストンも耐久性が出ていると思いました。スラスト方向で必ず出る当たりのきついとこはそれなりに減っているんですが、吹き抜けも全く無いですし、とても良い状態でした。現状、絶好調でしたのでチェックだけしてそのまま組み付けました。
これはメンテナンスと関係ないのですが、最近、SX用のCDIに交換してみました。これがやっぱり結構良いフィーリングでした。上が伸びるってのと、エンジンの回転もスムーズになった気がします。開けた時の音も気分的かもしれませんが良い音に変わった気がしました。
ちょっと高価ですが、まあまあお勧めパーツですね。
リアショックのオーバーホールを行います。セット変更をしたのがこのマシンに乗り始めてからすぐだったので、かなり長い間乗りました。
その間にソフトスプリングを試したり……だったのですが、ショック自体がヘタってきたってのもあると思いますし、フォークのモデファイをしてバランスを見たりって事もあってこの夏あたりからノーマルの69N/mmに戻しています。原状だとノーマルのスプリングが具合が良いですね。
スプリングリテーナーに3.5mm径のオーリングが、クッション材だと思うんですが使われています。ショックを分解する前にバンプラバーやこのOリングを確認すると、そのライダーがどんなライディングをしてたのかとか、リアショックがどんな状況なのかってのが想像できることがあります。
今回僕のはまあまあの疲労って感じで、つぶれかけてました。やっぱりオーバーホールには良いタイミングってところでしょうか。
オイルは写真だと解りにくいですね、今のWPの純正オイルは青っていうか緑っていうかの色付きです。汚れが解り難いのですが、かなーり使っているショックは灰色のオイルが出てきます。
08からシリンダーボディーがアルミに変更されて、おそらくこれが減ってきてそんな廃油になるんだと思います。ボディーがアルミになってのメリットはショック本体がとても軽量になったって事です。すごく良いと思います。07までのPDSと比較すると明らかに違いが解ります。
今思いついたんですが、今度購入予定のモデルにはシリンダーの内側にコーティングをしてみようと思います。
分解中です。サブタンクを外します。感じ悪くかなり温めます。でないと外れません(汗)。
中にはフリーピストンが入っていて、そのOリングを交換するのが目的です。現在のパーツリストにはこのあたりに関連する消耗パーツは明記されていませんので、ちょっと前のパーツリストから品番を拾ってオーダーしています。窒素ガスがショック本体に入ったり、オイルが窒素室に入ったりって事がたまにありますので、毎回の作業として行っています。
オイルシール及びブッシュの交換をしています。このオイルシールって高価なだけあってとても性能が良いと思います。ゴムの素材とテフロンの素材で二分割で構成されているんですが、歪みが無いためにフリクションレスにもなっていると思いますし、オイルも洩れにくいんだと思います。多分……。
SHOWA、KAYABAでも時々こんなタイプを使っている車両があるのですが、でもシールの価格は結構は安いですね。WPのももう少し安くなってくれると良いのですが。
ブッシュの打ち変えは慎重に行います。変な入れ方をすると、しっかり入っていてもインナーロッドのとの当たりがきつくなってフリクションが出てしまいます。
ピストンリングが減ってくるとダンパー効果に影響しますので、出来たら毎回交換しときたいパーツです。オーバーホール後のしっかり感が結構違うはず、です。
地味なパーツですが、Oリング二点。窒素封入口のOリングとリバウンドアジャスターのロッドのOリングです。過去に交換せずに組んで痛い目を見たことがありますので、これも交換します。
リバウンドアジャスターのロッドを抜くのって10以降のPDSはかなり面倒な作業になるんですけどね。
バンプラバーも当然交換です。内側が剥がれてキズキズなのと、やっぱこれも使っているとクッション性も悪くなりますのですっきりとです。
通常のPDSのオーバーホールではこれだけのパーツを交換しています。パーツ一点の不具合がショックの不調になってきますので、本当はオーバーホールキッ
トとかを使って全て交換がベストなんでしょうけど、金額的なことも考えて僕の今までの経験ではこの辺りを押さえておけばっていう結果です。
きれいに仕上がりました。ちょうど夜に組み付けが終わりましたので、朝まで置いてオイル洩れや窒素ガス漏れをチェックしてからスプリングを組み付けます。
14のシム表(4CS)用です。新型が出てくるとその年のセットが気になりますのでチェックするのですが、今年の4CSのは解り易かったです。13モデルの不具合を改善するって内容がいろんなところに見られました。やっぱりメインの変更箇所はハイドロストップ関連のパーツや、シムの積層ってところでしたね。
このデータをアレンジして、13モデルに乗ってきてもう最後の最後、セット変更を行いました。変更した箇所はハイドロストップ関連ではなくて、コンプレッションタップのシムの積層です。コンプレッションタップはこんな感じでフォークをひっくり返すとオイルが抜けずに取り外す事が出来ます。組み付けの際は結局スプリングまで抜いてエア抜きをしっかり行わなければならないんですが、全バラまではしなくても良い作業です。
しなやかに動かすのを目的として、なおかつボトムでしっかり踏ん張るってのを目指す訳なんですが、一年通してしっかり踏ん張るってのがなかなか上手く出せませんでした。今回意外だったんですが、コンプレッションタップのシムの並びの工夫で結構上手く行くんだなあって思ったんです。これまでは油面やハイドロストップ廻りばかりを気にしていたんですけどね。今までで一番のが出来ました。
でも14の積層を丸写しって訳ではないですよ(笑)、それより全然柔らかいセットです。データを見る限りだと14のセットはちょっと良く解らない位固くセットされています。これは今後試走してみてのお楽しみですね。次回以降いろいろお伝えしていけたらって考えています。
これは13.4CSのハイドロストップのシリンダーの絵です。穴が四つ開いていて、オイルが抜ける構造です。その下にシムが積まれていてオイルの流れを調節してるんですね。で、もういいやで出しますが……
13モデルの4CSって何台か作業したのですが、シムがくにゃくにゃになっているのが何台かありました。こうなってくるとオイルロックもへったくれも無くなって来ると思います。ちなみに僕の車両は開けるたびになってました。
シムを交換すれば直るから良いんですが、良いフィーリングの期間は短いですよね。
そしてこれが14.4CSのパーツ。オイル通路が減ってるのと、
シムが全体的に厚い物に変更されてがっちり詰まれてます。これなら問題無さそうに見えますよねー。
なので、この辺りの改善されたパーツの価格を調べてみたのですが、意外と安かったのでひとまず注文を入れてみました。13モデルを使っていいる方は、メンテナンスの時には気軽に交換しても良いパーツなんじゃないかなーと思います。
という訳で、あれやこれやしながら中古車両完成です。きれいに仕上がりましたよ。我ながら走りそうなオーラが出ている気がしました(笑)。
次回は14モデルのインプレをお伝え出来たらよいなあと思います。今度のニューマシンはいつになく楽しみなんですよねー。