一年使ってきた11モデル、250SXFの中古車整備風景です。毎年だいたいこの時期に行っている作業になります。新しいオーナーさんの気持ちにこたえられるように気持ちを込めて整備しています。
使用期間は一年ですので消耗パーツなどそれほど傷んではいないのですが、新しいオーナーさんにお譲りするための整備ですので、使用限度内でも交換するパーツが多くなります。
一般的には、最近のKTMのオフロードモデルは本当に耐久性が出てきていて、従来は頻繁に交換しなければならなかったようなパーツもかなり持ちが良くなりました。僕はほぼ週一で乗っているのですが、変なトラブルを起こさない限り、ブレーキパッドやエアクリーナー、まあ後はオイルなんかも当然ですけど、そんなの以外は何にも換えていないんじゃないかなー?とか思います。レースに頻繁に出場しているライダーは別ですけどね。
問題は二年目からですね。ベアリングのグリスアップ、チェーン、スプロケット、スライダー、ピストンやリング、後はなんでしょうねー…PDSのハイムジョイントとか、ホイールベアリング等を交換しておけば、かなりリフレッシュ出来ると思います。
写真はヘッドを分解してる最中のです。大体分解したとおりに並んでると思うのですが、組み付けはこれの逆の手順で組んでいくと間違いがありませんのでそんなふうに作業していきます。これだと余っちゃった箱(僕の友人はそんな物を用意しているらしいのですが)にパーツが入る事は無いと思います(笑)。
ピストンリングを交換しました。11モデルは確か去年の9月から使い始めたと思います。今年の8月だったか9月だったかに、しどきでフロンティアさんの試乗会に参加させていただき12モデルの250SXFに乗ったのですが、それと比較してもパワーダウンもないし、まだまだ行ける感じでした。
ただやっぱこのあたりは、お譲りするための整備ですのですっきり交換ですね。
過去のモデルはピストンがおかしな減り方をする車両もあったのですが、最近のモデルは問題ないみたいですね。僕の開けが足りないんじゃないかという話もありますけどね。
インテークバルブ、エキゾーストバルブです。この車両は最初のモデルからチタンバルブを使っています。バルブの減りがかなり気になっていましたので、念のため新品も準備しておいたのですが、意外に全く平気でした。大抵インテーク側が手裏剣のように鋭利に尖ってくるのですが、クリーナーの管理に気を使った成果が表れたんでしょうか(笑)。
一本あたりかなり高価なパーツで、何にも無いのに交換するってのがすごく勿体無くて抵抗を感じましたのでそのまま組みました。ヘッド回りの作業は割りと手っ取り早く済みますので、タペットクリアランスを点検しながら、追ってフォローさせていただくという選択にさせてもらいました。
スチール素材のバルブにしてくれても良いんだけどなーといつも思っていましたが、まあこれだけ持ちがよければチタンでもOKでしょうか。。
リアショック、フォークは今年もいろいろモデファイを重ねてきました。KTMとしては久しぶりのリンク付ということで、リアショックは何度もセットし直しました。フォークはクローズドカートリッジも「何年目ですか?」ですので、オープンカートリッジ同様かなり狙い通りのセットが出来るようになりました。今回は何も変更することなく、通常のオーバーホールを行いました。
サスペンションのOHネタついでなのですが、去年フサベルのTE、TCシリーズで使われ始めたブルー(グリーンかな?)のオイルシールです。かなり良いです。滑りますし、半年以上使っているのですがオイルの滲みなんかも全く無くて耐久性も抜群だと思います。しかも今までのNOK(ブラック)よりリーズナブルなんですよね。
KTMの12モデルは全てこのシールが使われるようになりました。4860のフォークの方は次回のメンテナンスの際は是非お勧めだと思います。
フォークを外したついでにステムベアリングのチェックを行います。SXはこのあたりに電装パーツなどが付いていませんので、気がついたときに簡単にできる作業です。とは言ってもこのバイク、まだ一回も見たことが無かったんですけど…きれいですね。
交換となるとアウターレースを打ち換えて、アンダーブラケットのベアリングを抜いてと、圧入されている物を交換しますので、ちょっとだけ面倒になります。今回みたいに何かのついでにグリスアップしておくと良いと思います。真っ赤になってしまったベアリングは、いくらグリスアップしても再使用はまず無理ですよね。
こちらもリアショックを取り外したついでに三点グリスアップを行いました。当然交換が必要なベアリングはありませんでした。
その昔(笑)、80年代のKTMはオイルシールがゴムじゃなくてプラスチックだったりフェルト(綿みたいな素材)だったりして、乗るたびにグリスアップが必要なんじゃないか?みたいな時代がありましたが、まあ昔話ですね。
いまはシール性もとても良くなり、リンク付になってもそれ程リンク周りのメンテナンスが面倒といった雰囲気では無いと思います。かえってPDSのハイムジョイントのほうがよっぽど痛むのが早いんじゃないかなー?と思います。
そうはいってもやっぱりリアショックを外す際や、気がついたときなどはステム同様グリスアップっていうのが、長持ちをさせる秘訣だと思います。このマシンでは様子見で一度だけグリスアップを行っています。ですので状態は問題ないのですが、前回メンテナンスした時も同じだったのですが、リンクアームのベアリングへの水の浸入がとても気になりました。この部分のベアリングは特に注意してみたほうが良いかもしれませんね。
まあ、再度繰り返しになりますが、新車時に意外としっかりとしたグリスアップがされていませんので、初乗り前にメンテナンスしておきたいステムとリンクってことです。最初がとっても肝心だと思います。
ブレーキ廻り及び、スイングアーム廻りのメンテナンスになります。
例によってキャリパーサポートボルトは気が付くと水が入ってきゃぴきゃぴに錆びていたりします。ひどい時はキャリパーからサポートが抜けなくなったりします。結構ぐったりします。ですのでたまにグリスアップです。
この辺りは簡単な作業ですよね。スムーズに動くとパットの減りも均等に保てますし、ブレーキも良く効きます。とても重要な整備だと思います。
チェーン引きのボルト、これも気がつくとがっちり錆びて、スイングアームからボルトが抜けなくなることが過去に何度もありました。これはもーお最悪で、そのまま家に帰るか、酒屋にビールを買いに行きたくなる心境になりますね。
現行のモデルはスイングアームにプラスチックのキャップがいくつかあって、それをシール剤で埋めておくことと、やっぱりボルトにグリスを塗るって作業が必要です。タイヤ交換の時出来ますので、簡単ですしお勧めしたいですね。
リアマスターシリンダーを固定するボルト、これは結構緩みます。すっ飛んでしまうこともありますし、変な角度で固定されているとプッシュロッドがピストンをまっすぐ押すことが出来なくて、ピストンの当たりが悪くなりオイル漏れ・油圧抜けの原因になりますので、しっかりした位置でがっちり固定したいですね。
チェーン、スライダー、スプロケットは当然新品に交換しました。これだけでもかなりテンション上がりますよね(笑)。
11モデルと12モデル、両方まだ僕のマシンです。11は整備している最中で、12は考えていたより早く手に入ってしまい色んな面(笑)で焦っている状況です。来年も今年同様のバイクを教材として乗ってみる事にしました。11モデルでやり残した事がたくさん有ることと、やっぱりFIの故障探求を煮詰めてみたいって事。
まあ一番の理由は面白いんですよね、このマシンは。一年乗ってきてようやく慣れてきましたし、楽しくてちょっと離れられないバイクです。
なのですが、ニューマシン、いきなり調子が悪くなりました。初乗りの後、まあ大体30分を二回やって、エンジンがかからなくなっちゃったんですよね…。そしてかかってもアイドリングしないみたいな症状でした。
比較的暖まらないと出ない症状ではありませんので、故障探求としてはし易いトラブルですよね、一回一回コースで全開走行しなくても良いんですから。
なので仕事場でまずはあーでもないこーでもないと、基本的なプラグとか、11モデルの燃料ポンプを変えたりとか、その他いろいろやってみました。直りません。簡単ではないんですよね。
僕の知識ですと現状ではこうなります。現物交換です。なんだかんだ言ってもやっぱこれですよ。11モデルのスロットルボディーを入れたら一撃で直りました。という事は、そこについているセンサー類やパーツを疑う事になりますので、コンデンサー → 大気圧センサー → インジェクターの順に交換していったのですが、直りません。
最後にスロットルポジションセンサーを交換しました。直りました。ですが、試しに12のスロットルポジションセンサー(故障と思われる)を11のボデーに取り付け試したところ絶好調なんですよ…ってことはセンサーは故障なんかしていなくて、センサーをセットする位置が間違えてたってことだったんですね。少しずれていても結構はっきりとした症状になります。マニュアル上で適正な値が出ていて、そこに合わせなくてはなりませんので、あんまりいじらないほうが良いパーツですね、これは。ディーラーさんにそれを教えてもらって、しっかり組み付けました。
その後絶好調です。12モデル、教材としては最高のスタートだったのですが、なんかこのもぐらたたきみたいな作業がずっと続くんでしょうけど、勝たないとなりませんね。(笑)
中古車整備に戻ります。スロットルボデーを外したついでに、フューエルスクリーンを組み込みました。これは11モデルには入っていないパーツです。12から使われているパーツを前もって取り寄せておきました。
インジェクターに泥やごみが進入するのを防ぐ最後の砦みたいなもんですね。11モデルの方には当然お勧めだと思います。
と、まあいきなり出来あがった写真になってしまいましたが、11.250SXFです。外装はいつもどおり新品に換えました。その他スリッパークラッチ付、KTM.FARIOLIチェーンテンショナー、内圧コントロールバルブ、マッピングの書き換え(トルク型に、エンブレは利かさず)、前後サスペンションモデファイ、etcです。
このモデルと12モデルの比較になるのですが、一番大きな変更点は、12モデルはセルスターターが付きました。エンジン始動が簡単になり、よりやさしいマシンになってます。11モデルはキックのみなのですが、乗り味は何となく11の方が良かった気がします。バッテリー、セルモーター、スターター周りのギア、ワンウェイクラッチなど重量物が付いている12モデルより軽量だからかもしれないです。何となく腰高な印象が12モデルには有る気がしないでもないです。
まあそうはいってもセルはいいですよね。11モデルのキックの始動は結構大変でした。そういった意味では12はエンデューロに向いていますよね。エンジン始動、その一点のみでかなりエンデューロレーサーを作るという意欲が沸いてきました。エンジン、サスペンションは11モデルで勉強出来ましたので、それを使ってそんなマシンを作っていこうかなー、なんて考えています。
12モデルのインプレついでに、150XCです。お客さんのお話などいろいろ聞いていると、割と注目度の高いモデルみたいです。
写真はオー川さん号。日高でB級ピンピンでした。やりましたねー、やっぱマシンがかっこいいからですよ、きっと。じゃなくて、確かに乗れていましたよねー。
北海道に出かける前に一回乗らせてもらいました。場所は日光オフロードパーク。コースは割と荒れていて、ギャップも多く路面も濡れていてあと一箇所ガレ場の登りなんかもあって、エンデューロライダー向きなコンデションでした。僕も以前150を所有していた事があるのですが(そのマシンは125SXベースで、後から150のキットを組み付けたマシンでしたが)、面白かったですねー。そんな予備知識を持ちつつの最新マシンの試乗でした。
印象はがらりと変わった感じで、どちらかというと200EXCみたいなエンジンフィーリングでした。以前乗っていたやつは低速からぼちぼち吹け上がってきて中速からウワオーーーって伸びてくるエンジンだったのですが、このマシンはぼちぼちの間隔が少なくてドーーンと来ます。上がSXベースよりも伸びないのは、キャブレターが36mmだからですね、多分。
200EXCってマシンはとっても人気のあるバイクで、何年か前ですとレース会場はKTMっていったら200ばっか、みたいな時期もありましたよね。エンデューロに適したエンジンだからだと思います。
僕はその当時なぜか125ばっかり好きで乗っていたのですが、理由としてはアクセルを開けやすい特性の方が好きだったからだと思います。トルク型のエンジンが上手く使えなかったんです。ですのでこのマシンも上手く乗れないなーっていう印象でした。
車体関係で「あっ…」て驚いたのは、ローダウンしてるんですね、このマシン。乗ったとき足つきが良くて気がつきました。最近のモデルはどれも車高が高く感じますので、これだけ足つきが良いと山遊びや、レースで疲れてきた時なんか本当にらくだと思います。
ただ少し前が上がっている印象に当然なってくると思うのですが(フォークの全長は変えていないんです)、確かに旋廻性能が今一歩といった感じで、この辺りは最初にオーナーさんから指摘がありましたので、バランス取りの作業を行いました。
写真はリアショックを分解中の絵で、右が現物です。左は入れ替える用のカラーです。結局車高を150SXと同じに戻しました。ちなみにカラーは両方純正パーツとして手に入ります。僕としては、リアショックをXCのノーマルで保ち、フォークをこれに合わせた高さにローダウン(バランス取り)すると…そんな方法も良いんじゃないかと思います。もしくは…
今回のように車高をSXに戻します。その上で以前にも使ったことがあるのですが、このリンクを入れます。ほんのわずかローダウンされ、ショックもやや柔らかめに出る印象でした。
この程度のローダウンですと、フロントのバランスもフォークの突き出しで対応でました。やっぱりこのマシンでも一度試してみたいアイテムだと思います。
その他諸々、試走後打ち合わせ?をしたのですがオーナーさんがすぐにそろえたのはこの三点です。結局日高には間に合いませんでしたが、この決断の速さははほんとにいつもさすがとしか言えないです(笑)。
スプリングは1レート下げました。フォークは既に1レート下げていたという理由も有るのですが、乗ってみるとリアショックがノーマルの状態でかなり固い印象でした。SXよりも固いばねが入っているのはローダウンしているからなのかもしれないですが、それにしても固かったです。僕自身としては、もう一つ(トータルで2つ)落としても良い方法が有るんじゃないかと思っています。
CDIとフライホイールは、エンジン特性の変更を狙っています。一体どうなっちゃうんでしょうかねえ?(笑)。
日高までに作業を終えられたこともあれば、間に合わなかったこともありました。良い結果が出た理由は、ライダーが良く走らせたというのは当然だったと思いますが、12モデルも良い出来だったからも大きな理由だと思います。プレイライディングとしても、レースに使っても、とても面白いバイクだと思いますが、全国のオーナーさんはどんなインプレッションをお持ちでしょうか?。